ギフトの知識 日本独自のギフト文化 – Ⅲ
『水引』

ギフトの知識 第一弾では「熨斗紙」(のしがみ)、第二弾は熨斗紙の右上についている「熨斗」(のし)について調べてみました。そして「日本独自のギフト文化」の最終となる第三弾は「水引」(みずひき)です。

“水引”とは、熨斗紙に描かれている(印刷されてる)“紐”のことです。実際は、何本かにまとめられた紙の紐で、贈答品につける熨斗紙を止める紐になります。

でも、紐なのになぜ“水引”っていうの? 水引の由来は?・・・意外に知らない“水引”について一緒に学んでいきましょう。

まずは、水引の基本・・・水引って何?

水引とは、贈答品や御祝儀袋や不祝儀袋につけられる紅白や黒白などののことで、紙を撚って作った“紙縒り”(こより)を染色したものになります。その色や本数、結び方により様々な意味をもち、用途に応じて使い分けします。これ以外に飾り紐としても使用されます。また手芸材料として、動物や植物などの置物やアクセサリーの材料としても使用されます。最近“水引細工”として人気があるようです。因みに、お相撲さんの髷(まげ)を結い上げて結んでいる元結(紐)も紙縒り(こより)で同じ材質です。

それでは、そんな“水引”について・・・

◆ 「水引」を使う意味は?

水引は品物に熨斗紙をつけて、それを止める紐の役目をしています。故に“未封である”という封印の意味や魔除けの意味がるといわれています。また水引の結びは、引けば引くほど強く結ばれるものが多いので、人と人をび付けるという意味もあるようです。

いわゆる日本古来のギフトラッピングのリボンのように捉えがちの水引ですが、その用途を品物を包む熨斗紙と表き、そして水引の結び方によって使い分けします。だから、西洋の贈り物のように開ける(解く)ことを前提とし、ただラッピングしてリボンを掛けたものとは全く意味合いが違うのです

何だか格式張った「水引」のイメージですが、その意味を知ると贈り手の想いが“見て直ぐに伝わる”ステキな慣習なのですね。

 

では・・・。

◆ 「水引」の由来と歴史は?

最初に言っておきますが、水引の歴史も由来もこれだっ!という明らかなものはなく、言い伝えになります。ただ、古くは室町時代から日本の贈答品には必ず存在していたという歴史ある作法なのです。

資料:南信州産直通販水引「そうきち」

では、その水引の歴史ですが古くは室町時代(1336年〜1573年)の中国との日明貿易(1401年〜1549年)にはじまります。当時、明からの輸入品する全ての箱に赤と白の縄が掛けられており、この縄は明側が輸出用の品を他のものと区別するために使用していただけなのに、日本側がこの縄を答に使用する習慣し、それ以後、日本で贈答品に赤と白の紐をかけるようになったという“勘違いからのはじまり説”があります。

もうひとつは、航海の無事を祈り、海賊から舟を守るための“魔除け”として縄に塗った黒色毒が解くと赤色に変色したという“魔除け説”があり、また宮廷への献上品には、紅白の麻の紐で結ぶ習慣があったということです。

そして、室町時代後期になると麻の紐の代わりに紙を撚って作る「紙縒り」(こより)に撚りが解けないよう糊水を引いて乾かして固め、紅白や金銀の着色水にひたして引きながら染め分けした紙糸(紙縒り)が使用されるようになります。

この紙縒りに“糊水を引いて乾かす”や“着色水にひたして引きなら染め分け”したことから「水引」と呼ばれるようになったという説があります。

古くから続く伝統的な慣習やモノの歴史を紐解くと、神仏への“お祈り/お供え”や“縁起”(たまに語呂合わせ的なものまで)というものが発祥・由来となっているものが多いのです。しかし、水引は昔の人の“勘違い”からはじまったとしたら、少し愉快でもあり、古くから日本人は“献上品(贈り物)には特別な想い”をもった民族で、相手に対する律儀さや謹厳実直ささえ感ずる次第です。

◆ 「水引」の種類は?

冒頭でも書いていますが、水引は贈り物の用途によって色や紙縒の本数、結び方などで使い分けます。基本は祝儀(お祝いごと)と不祝儀(お悔やみごと)の贈答品や封筒の飾り紐になります。他には正月飾りなどの飾り紐や工芸(細工)といったものに用いられています。

では色から。

<水引の色による使い分け>

  • 赤白:一番スタンダードな色使いで、祝い事全般に用いられます。紅白は下記の通り特殊な水引のため、一般的に「紅白の水引」と呼ばれているもののほとんどは「赤白の水引」の誤用である。
  • 紅白:皇室の祝い事にのみ用いられるもの。用途の特性上、販路も限られるため、一般に目にすることはほとんどないです。紅色の水引は赤い染料を使用して染めてはいますが、染め上がった水引は玉虫色と言われる濃い緑色をしており黒と見間違いやすい色になります。
  • 金銀:これも結婚祝い・結納などに用いられます。祝儀袋などでよく見掛ける水引の色です。また結婚以外でも長寿祝いや褒章受章祝いなどの一生に一度のようなお祝い事に使われることもあります。地域によっては赤白同様に一般のお祝い事に使われることもあるので注意しましょう。
  • 金赤:神札(しんさつ)や門松飾りなど、特殊な用途にのみ使用されます。
  • 黒白:香典やお供えなど、主に仏事に用いられる色です。欧化政策により黒が喪の色とされた明治以降から使用されるようになりました。京都や、京都文化の影響を受けた地域では前出の皇室で使われる“紅白”の水引と見間違えやすいことから使用しませんでしたが、現在では徐々に仏事での黒白の水引の使用は浸透しています。
  • 黒銀:黒白に同じ。
  • 黄白:香典やお供えなどに用います。黒が前出の“黒白”の皇室“紅=黒似”から忌避される関西や北陸地方の法要で用いられます。黒の次に尊い色が黄色である事から。
  • 双銀(そうぎん):あまり目にすることのない銀と銀の水引になります。(総銀は誤用)主に仏事での通夜や葬儀、法事・法要などの香典を包む際に用います。地域によってはお布施や戒名料を包む際にも用いられることがあります。ただし、比較的包む金額が多いときに用いられるので意識しておきましょう。また女性が香典を出すときやキリスト教形式の場合にも用いられます。
  •  双白:真っ白の水引で香典などに用いられますが、主に神事で用いられます。
  • 青白:最近ではほとんど用いられなくなった色ですが、昔は法要などの仏事やキリスト教形式などに用いられます。勿論、いまでもお使いいただいてもかまいません。

水引の色について、どうでしたか?

実際、私も「赤白」ときたら、ついつい「紅白」と言ってしまいます。また、“紅白の水引”は「一般に目にすることはほとんどない」といわれると気になりますね。一度本物の水引の色を見てみたいものです。

あっ!近年“水引細工”が人気で、上記以外にもいろんなカラーが出ているようです。

では、水引の本数や結び方について。

基本は、何度でも結び直せる「蝶結び」と結んだ脚を引っ張っても解けない「結び切」になります。後は紙縒(こより)の本数によっても意味が変わります。

結び方に入る前に水引の本数について知っておきましょう。偶数・奇数が基本になるので簡単に覚えられます。

◆ 慶事・弔事など目的によって水引の本数も変わる

水引の本数の基本は、3、5、7本の「奇数」になりますが、婚礼は5本をふたつ(倍数)として10本を使います。

なぜ奇数かというと、これまたふたつの説があり、ひとつは古代中国の陰陽説からきており「偶数を陰数、奇数を陽数」とした説です。

もうひとつは、単純ですが偶数は「割り切れる」ことから、起が良くないと言うがあります。

前出の方が最もらしく、後者は後から結びつけられたという感じですかね?

<水引の本数使い>

  • 事用の本数:5本・7本・9本の奇数を使用します。但し、9本も奇数ですが、「苦」を連想させるため避けます。婚礼関係には「固く結ばれて離れない」ことから、10本を使用します。また、10本であるのは「夫婦は2人でひとつ」という意味で紅白5本ずつを1組にして用います。
  • 事用の本数:2本・4本・6本の偶数を使用します。弔事用の本数が「偶数」のところをみると、使用本数の由来は陰陽説がそれらしく思えてきますね。

※百貨店などサービスでご用意されているお店は「蝶結び」は7本、「結び切り」は5本・10本が基本になっているようです。

 

◆ 「水引」の結び方と使い方

  • 蝶結び(花結び、リボン結び)

赤白の蝶結びは、繰り返し結ぶことができるので、出産や進学、お中元、お歳暮など、一般的なお祝い事で「何度繰り返しても良いお祝い事やお礼」で用いるオールラウンダー的なものになります。また、お返しなどの「内祝い」にも用いられます。蝶結びに込められた「何度でも結べる」以外に、余った水引を切る事なく、輪にして結ぶ、そしてその形からすべて滞りなく「丸く納まるように」や「縁を切らない」という意味もあるのです。

故に婚祝いやお舞い、快祝いなどは「何度り返しても良いお祝い事」ではないので絶対使っていけないというルールがありますので覚えておきましょう。

また、水引の紙縒紐の本数は、奇数本で一般的には5本になりますが、丁重なものには7本、簡略なものには3本になります。実際、7本が無難にお使いいただけます。

  • 結び切り

結び切りは、前出の色の使い方によって婚礼、快気祝いなどや病気、災害見舞い、弔事(因みにお悔やみやご不幸なときには“熨斗”はつけない)などの“一度しかないこと/繰り返さないこと”に使用します。しかし、この認識は昭和時代に広まったそうで、本来は明治時代〜昭和時代初頭頃にあわじ結びより軽い気持ちで贈る場合や身内に用いるものとして使われていたそうです。(勿論お祝いなので赤白を使います。)また、結び切りは“本結び”“真結び”とも呼ばれます。

この結び切りは先の水引の色で慶事と弔事用の両方に使用されます。

同じ結び方でも水引の色が、赤白、金赤、銀赤は慶事に、黒白、黒銀、黄白、双銀、双白は弔事に使用します。※前出「水引の色による使い分け」参照。

  • あわじ結び(あわび結び)

古くから慶事や弔事、神事、佛事に用いられる結び方で、よく目にする結び方です。一度結んでしまうとほどくのが難しいことから赤白、金銀の水引では結婚祝いなどの一度きりのお祝いの時に使われます。また黒白、黒銀などの水引では、弔事などに使われます。その目的によって水引の色を使い分けて使用するのが一般的な用い方になります。名前の由来は定かではありませんが、結び目の形が貝のアワビに似ているからこの名がついたという云われがあります。

  • より返し(あわじ返し)

あわじ結びの変形で大きな品物や重い品物などを結ぶ時に、あわじ結びだけでは頼りない場合により返しを使ってしっかりと結ぶ方法です。寄りを返す波に例えて、善い事が幾重にも重なるようにという意味をもち婚礼には使用ししません。

 

  • 引き結び(輪結び)

「縁起を切らない」という事から余った水引を切る事をなるべく避けて輪にして納める結び方。先の蝶結びの形よりも丸く輪になり、すべて滞りなく丸く納まるようにという意味を持ち、特に婚礼に好んで用いられる結び方になります。

 

  • 梅結び

梅結びは名前が示すように見た目も梅の花のような形で「固く結ばれ、ほどけない」という結び方になります。そういう意味から梅結びの水引は婚礼などで用いられることが多い結び方になります。

また、見た目からアクセサリーなどの細工にもよく用いられています。

 

今回調べていて「蝶結び」でちょっと気になることがWikipediaに書かれていました。

それは、“蝶結び(リボン結び・花結び)”は「開く事を目的としたリボン結びであり本来の水引の結びではない。」とありました。確かに古くは贈答品を結ぶ紐として使われはじめたことを知ると、簡単に結び、解けることができる蝶結びは本来の意味のある贈答の内容とは違ってくるので、そうとも受け取れます。で、いろいろ調べてみましたが、このWikipedia以外にはこれっといった確証はつかめなかったです。しかし、現在「蝶結び」がここまでスタンダード化しているのなら全く問題はないです。これも時代と共の進化ですかね。

 

最後に・・・。

◆ 水引のいま

礼節に乗っ取った水引の使い方をご紹介しましたが、最近では水引を使って動物や植物、乗り物、アクセサリーなどの「水引細工」も人気のようです。

加賀水引 津田より

今年の2/11にTBS「マツコの知らない世界〜ご祝儀袋の世界〜」で出演されていた水引デザイナー松浦ちえさんのご祝儀袋もステキでした。

また、国内の水引流通の約70%を占める一大生産地の長野県飯田市や愛媛県四国中央市の二大産地以外にも、今回参考にさせていただきました石川県金沢市や京都など、伝統を守りながら新しいもの作りやワークショップを開催されていたり、知れば知るほど“伝統を進化させていくチカラ”のすばらしさに気付かされました。

伝統として、工芸として、進化しする“水引”

今回お盆休みもあり、ギフトの知識では「日本独自のギフト文化」として三回に渡る熨斗紙にまつわる内容を掲載させていただきました。

以外に知らないことが多かったですが、それ以前に私自身、日常的なものでまったく興味がなかったっといってもいいでしょう。でも、熨斗紙や熨斗、水引など「日本独自の文化」であることや、毎回慶事で熨斗と水引がセットだと思っていたことが、それぞれの由来や歴史が違っていたり、じゃぁ、慶事の贈答でいつからこのふたつがセットになったのか?いまでも??ですが・・・。また、水引が“勘違い”からはじまったとしたら・・・これまた愉快。

私たち日本人から見ても、贈り物以前に日本のギフト文化には不思議なことがいっぱいありますね。

外国の方にも日本のギフト文化の“不思議”を伝えて、新しい日本の魅力や再発見にしていきたいですね。

長文ながら最後までご高覧いただきまして有難うございました。

【参考資料及びおすすめ参考サイト】

水引生産量流通量NO.1の長野県飯田の水引協同組合。水引の歴史やオンラインでは、水引商品から金封、熨斗、水引素材、水引製作のための工具、テキスト、教材など水引に関するものを扱っています。

水引産地の愛媛県の水引協同組合。水引結び検定やオンラインで水引キットなど入手できます。

伊予水引伝統工芸士の“技”に焦点を当てたオリジナルブランド。水引のアートの世界を見ることができます。

「水引のある生活」をコンセプトに、水引の文化・歴史や新たな境地を紹介し、世界に発信。水引教室も開催。

伝統的でありながらモダンでおしゃれな水引専門店。祝儀袋から水引細工などステキな作品を拝見できます。オンラインあり。

■ 和工房包結(わこうぼうほうゆう) >>> https://mizuhiki-houyou.jp/index.html

京都を拠点に活動中の水引作家森田江里子さんが主宰する水引工房。

メディアでも取りあげられる方で、全国主要都市で開催される水引スクールの紹介などが載っています。

様々な水引細工の結び方や簡単な細工レシピを紹介。

水引デザイナー松浦ちえさんのオンラインサイトです。