「福寿帳」

結婚のお祝いにはいろいろな物がありますが、月日が経って思いがけない縁から改めてその価値を感じることがあります。

昭和42年、叔父の結婚祝いに、母上が贈ったのは「福寿帳」と表された1冊の賀状帳です。分かりやすく言えば高級な色紙帳です。大正から昭和にかけて活動をされた著名な僧侶であり書道家の豊道春海の為書と、大石順教尼の水墨画、その他数点が描かれています。

お顔の広かった母上が、ご子息のために持ち回って集めた作品の数々です。大切に保管されていましたが、たまたま巡り合った書道家のお孫さんに当たる方が、為書はとても珍しいので見せて欲しいと言われたことから、日の目を見ることになりました。教養が追いつかず書を読みこなすことはできませんが、どのような言葉がしたためてあるのか興味が湧きました。

モノやコトがギフトの実態としてイメージされますが、この贈物にはその両方と、どちらにも属さない価値やご縁、そして後世への愛情が込められているのだと思いました。かつては、人生の節目に尊敬する方から一筆頂戴することがありました。唯一無二の宝物とは、こういうものであると思います。

 

m.o.